2021年10月16日
藤原兼家は、①でも説明したように当時の権力に近い場にいた人物のひとりです。兼家だけではありません。兼家のきょうだいたちもまた、権力に近い場にいました。
男性だけではなく、女性にもそれはあてはまります。たとえば兼家の姉である藤原安子という女性は、村上天皇妃として大きな影響力をもっていたと思われます。『蜻蛉日記』に安子は登場しませんが、ほかの女きょうだいとしては藤原登子や藤原怤子が描かれています。いずれも兼家との関係を意識しながら読んでみると面白いかもしれません。兼家と彼女らとの接近は、天皇あるいは次期天皇との接近とも捉えることができそうです。
『蜻蛉日記』は政治的なあれこれを直接記していくことを殆どしていません。しかしそのような態度を貫きつつも、兼家と天皇に近しい人たちとの関係をアピールしているようにも見えます。作者の「女性としての心情」だけではなく、歴史的な事柄も念頭に置いて『蜻蛉日記』を読むと、これまでとは違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。
